金相集氏

譲渡企業:株式会社リンケイジアジャパン
  譲受企業:株式会社ミロク情報サービス

ユーザーファーストを具現化した起業家

株式会社Yagish 代表取締役。韓国の大学卒業→韓国大手広告代理店→日本の大学・大学院卒業→韓国で共同創業→研究員→株式会社NHN JAPAN→株式会社LIFULL→株式会社リンケイジアジャパン創業を創業して、株式会社ミロク情報サービスへ株式譲渡。現在は株式会社Yagishを創業し、「履歴書・職務経歴書の作成・編集・管理・活用において、どこよりも使いやすくどのデバイスでも使えるユニバーサルサービス」を軸に、更なる事業拡大を目指す

譲渡企業

会社名
株式会社リンケイジアジャパン
経営期間
2008年11月~2016年3月
事業内容
■システム・アプリケーションの企画・開発・運用 ■SNS総合コンサルティング ■データホスティングサービス ■アジア間M&Aコンサルティング ■アジア各国における優良なサービスの他国展開

譲渡内容

譲渡額
非公開
譲渡範囲
100%

EXITERの経歴

氏名
金相集
経歴
1997年 韓国で1,500万人以上のユーザーを抱えるコミュニティサイトを構築
2005年 株式会社NHN JAPAN SNSサービスの立ち上げ責任者
2006年 株式会社ネクスト(現:株式会社LIFULL) 地域コミュニティサービスの責任者
2008年11月~2016年3月 株式会社リンケイジアジャパンを創業
2016年4月 株式会社ミロク情報サービス 新規事業及び投資担当責任者を務め、東京大学の先端科学技術研究センターの客員研究員を兼任
2021年9月~現在 株式会社Yagish 代表取締役

大学の夏休みに作ったサイトが韓国で大ヒット

韓国の大学卒業後、新卒で入社した大手広告代理店で当時始まったばかりのインターネットを研究をするチームに配属されます。
当時はまだコードを書ける人が少なかったので、プログラミングの出来た僕は新卒ながら研究チームに加わることになったのです。
インターネット通信を行う同好会やグループサークルなどのコミュニティが展開するいわゆるチャットルームを朝から晩まで覗き、それぞれの属性を見つけ、そこにいる人々のログ解析を行いました。
この研究をきっかけにオンライン上で形成される人間関係に興味を持ち、より詳しい研究をしたいと考えた僕は、当領域の研究を行っているアメリカ・ドイツ・日本の大学に、この分野を深く学びたいという想いを手紙で送りました。
返答のあった大学の中でも海外学生を対象に授業料免除制度のあった東京大学に進学し、その後、東京工業大学に僕の研究領域の権威がいることを知り、より深い研究をするために編入します。

対面の会話で記録は残りませんが、オンライン上のやり取りにはログが残っており、そのログ解析をすることによってオンライン上の人間関係について調査しました。
また自身の研究をより社会貢献性の高い方向へ展開できないかと考え、政治の政論形成プロセスや社会トレンドに関して、インターネット上のどこにその起源があるのかという分析を人間関係やログ解析を駆使し発展させていきました。

その後も研究者としてのキャリアを考えていましたが、思いがけないキッカケから韓国で起業をすることになります。
大学院の夏休みに韓国へ帰郷した際、高校時代の友人と約10年振りに会うことになりました。集まった3人は社会人ではなく、ソウル大学とMITに通っており各々研究者を志していました。
学生時代の昔話に花が咲き、その際友人の1人が「以前付き合っていた彼女を見つけたい」と言い出し、僕を含め皆情報工学領域を研究していた事もあり、3人で役割分担をして彼女を見つけられるようなサービスを作ろうという話に発展しました。
彼女の情報は、名前・出身高校・卒業年度のみであったため、僕のアイディアで同窓会サイトをコミュニティ化すれば見つけられるのではと思い付きます。
そこで小~大学の同窓会サイトをコーディングしてデータベース化させ、サイト上で人を探すことができるサイトを立ち上げました。

夏休みが終了し学業に戻っていた時に、僕たちの作ったサイトのサーバーがダウンしたと連絡がありました。
サーバーのスペックが影響でダウンしたのかと思ったのですが、よくよく話を聞いてみるとある日数十万を超えるアクセスがありその影響であると知りました。
どうやらその日の前日に韓国の国営放送で僕たちのサイトを使い不倫が行われていると取り上げられていたようです。当時そこまでアクセスのないサイトだったのでそれ自体はデマ情報かと思っていますが、ADSLが導入され多くの人がインターネットに興味を持ち始めているタイミングであることは確かでした。

それをきっかけに当サイトへのアクセス数は急激に伸びていきましたが、当時は人の検索が出来るのみで、登録をしてもらわないと個人情報がデータべースに蓄積されないため、まずはユーザーに登録してもらう導線を設計しなければなりませんでした。
そこで僕は登録者数を増やすため、検索した人が見つからなかった時に「あなたが探した○○さんは登録していません。登録がありましたら連絡いたしますので登録お願いします。」と検索後にアラート表示をさせ、登録フォームに置き換えました。
それを転機に登録者数は伸び続け、約1年半後に登録者数が300万人まで増加、3年後には1000万人を突破します。

IPOを目指して順調に伸びてはいたものの、徐々に当サイトは下火になりました。
予期していなかった点は、ユーザーは自身が探していた人とオフラインで繋がることが出来た段階で当サイトの利用目的が達成されてしまい、サイトの利用がなくなってしまうことです。
IPO直前のタイミングでアクセス数は一気に落ち、サービスは衰退していきました。

そして、初めての経営で苦労した点は人間関係でした。たまたま作ったサイトが大ヒットしたことによって、経営経験のない3人で会社を作りました。旧友と言っても10年ほど会っていなかったため、信頼関係も希薄でしたし、学業もあったため月1回韓国に行く程度でほとんど遠隔で経営に携わっていたのです。
また、その中の1人が途中で最初の資金調達先でもあった事業会社に株式譲渡をし、その会社が筆頭株主になりました。この裏切りにより、今までの漠然とした他者への期待がなくなったことも経営が上手くいかなくなった理由の一つです。

僕は最終的に負債を抱え込まない状況で株式譲渡をしました。

研究者から会社員へ活躍の場を移す

その後は研究者としてハーバード大学の研究に参加して、日韓中の異なる国で同じトレンドが起きた際にどのような違いがあるかについて研究をしました。半年ほどその研究に携わったのちに、慶応大学SFCで別プロジェクトの研究と非常勤講師を勤めました。
そのまま研究者としてキャリアを歩んでいこうかと考えていたのですが、研究者としての良い話がありませんでした。

そんな中、NHN JAPANからオンラインコミュニティサービスの立ち上げに協力してほしいとオファーを頂きます。
NHNでは当時の社長と、オンラインゲームの要素を組み込んだソーシャル・ネットワーキング・サービスを組み合わせたサービスを立ち上げるために2年程準備をしていましたが、韓国の本社から反対され頓挫しました。

サービス責任者をしていた僕は、自身が開発したいサービスを作ることができる環境に移ろうと考え、社員数人を引き連れて株式会社ネクスト(現:株式会社LIFULL)に入社します。そこで不動産ポータルのオンライン地域コミュニティを立ち上げ、IPOを経験する事が出来ました。

株式会社リンケイジアジャパンを創業

”アジアを繋ぐ”という意味のリンケイジアを2008年9月に日本で創業します。
ソーシャルマーケティング支援サービスを開始し、日本の流通・百貨店企業と取引をしました。

会社は順調に拡大しておりましたが、3.11の影響により日本だけで会社を続けることにリスクを感じ本社機能をシンガポールに移します。
そのタイミングで韓国の開発会社を1社買収し、本社機能はシンガポール、マーケティングは日本、開発拠点は韓国に設けてリスク分散を図りました。

M&Aを考えた理由

その後、タイ・ベトナムなど8社ほどアジアで拠点を設けました。
各拠点にヘッドを置いて運営をしていましたが上手く機能せず、僕自身が拠点を回っていましたが物理的にすべての会社の経営に携わることはできませんでした。
そうしているうちにグループ全体のキャッシュフローが回らなくなってしまったため、グループ全体で1番利益が出ていたリンケイジアジャパンを手放すことにします。

M&Aプロセス

3社に検討頂きまして、株式会社ミロク情報サービスへ株式譲渡することを決めます。
決め手はトップ同士の会食で意気投合できた点です。

MJS参画後は新規事業及び投資担当責任者を務め、東京大学の先端科学技術研究センターの客員研究員を兼任しました。

MJSに5年間在籍しておりましたが、うち3年間は東京大学の客員研究員として情報銀行のプロジェクトに携わっていました。
情報銀行とは北ヨーロッパで始まった動きで自身の個人情報を預けることが社会的・経済的にプラスになるという考えで、情報銀行に個人情報を預けて運用して貰うといった研究でした。個人の意思でパーソナルデータを活用できるようになれば、スパムを受けることなく本当に欲しい情報を得ることが出来るようになります。
ただ、この研究を行うにあたり重要になるのが企業側が管理している個人情報の提供なのですが中々協力頂ける企業は現れませんでした。そのために僕たちの研究は机上の空論のようになってしまい、ビジネスサイドから参加していた僕としてはあまり面白みを感じられなくなってしまい退職しました。

譲渡後(退職後)の生活

2021年9月にブラウザで簡単に履歴書がつくれるサービスを展開するため、株式会社Yagishを創業します。

同窓会サイトを立ち上げたときの考え方に回帰し、収益を考えずとにかくユーザー目線のサービスを設計しました。
ヤギッシュ立ち上げ後、大手人材紹介会社から履歴書作成サービスが続々と出てきましたがそれらは転職エントリーへの動線であることが明確で、ユーザー自身が望んでいる設計になっていないと感じます。
対してヤギッシュは、広告なし・会員登録不要で簡単に履歴書ができるサービスとしてリリースしたところ多くのユーザーに利用されるようになりSEO順位も上位になりました。
現在は1日のユニークユーザーは1万2000人程まで成長しています。

今後の挑戦としては、「コンテンツの拡充」と「グローバル展開」を考えています。
注目しているコンテンツは、”転職”と”広告”で、登録者が望むようなものをよいタイミングで提供できるようなサービスを考えています。
また、現在は日本国内のみでサービスを展開していますが今後はグローバル展開もしていきたいですね。

会社の組織体制としては、今までの経験を生かしコミュニケーションの質・量を大切にしています。
各個人のやるべき事が時間軸でハッキリしており全員がそれを認識することが重要です。
現在はなかなか社員で集まることは出来ませんが、出社は”仲間に会える最高の機会”と捉え、軽井沢にワーケーションに行くなどしています。

経営者・事業家としての強み

僕はせっかちで細かい性格です。こういった性格はパーソナリティとしてあまり好まれないこともあるかと思いますが、経営者としては強みになっていると感じます。

経営者としての評価ポイントは、どれだけ「スピード」を出せるかだと思います。スピードという言葉の中には、「意思決定の速さ」、「仕事の速さ」、「PDCAサイクルの頻度」も含まれます。

もう1つの強みは、細部へのこだわりです。同窓会サイトで言葉一つで登録者数が激変した原体験から、細部に神が宿ると考えています。現在のYagishでも、徹底的に細部にこだわり、文言一つ一つまで気を配っています。

M&Aを考えている人へのアドバイス

M&Aを考えている人には、譲渡先に大切な仲間がいくということを考えて欲しいです。
バリュエーションも大事ですが今まで多くの時間を共有してきた仲間たちの幸せや活躍できる環境も考えて売却先を選ぶべきです。

また、買い手側は半年~1年は自身の子どもが出来たというような認識で徹底的にフォローアップして欲しいです。

両社にとって最良な形になるような譲渡先を選んで頂けると良いですね。

金氏の活動

■株式会社Yagish(ヤギッシュ)
https://rirekisho.yagish.jp/company

■日本最大級の履歴書作成サービス『ヤギッシュ』
https://rirekisho.yagish.jp/info

■退職代行サービス『ヤギッシュ退職代行レンジャー』
https://www.yagish.jp/taishoku/?utm_source=yagish&utm_medium=Collaboration2&utm_campaign=pop

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