藤田英明氏

譲渡企業:株式会社アニスピホールディングス
  譲受企業:株式会社小僧寿し

異端をスタンダードに変える福祉業界のシリアルアントレプレナー

株式会社アニスピホールディングス代表取締役 兼 株式会社小僧寿し取締役。埼玉県の社会福祉法人→起業&バイアウト→株式会社アニスピホールディングスを創業、2021年12月に株式会社小僧寿しへ株式売却。継続して代表取締役を務めており、2022年7月1日にペット共生型障がい者グループホームが1000拠点達成予定

譲渡企業

会社名
株式会社アニスピホールディングス
経営期間
2016年8月~現在
事業内容
■ペット共生型障がい者グループホーム「わおん/にゃおん」 ■生活介護障がい者デイサービス「ワーカウト」 ■動物看護師によるペットシッター&看護サービス「ケアペッツ」 ■精神特化訪問看護ステーション「わおん 訪問介護ステーションおえど」 ■空き家の開発・再利用提案「空き家活用研究所」 ■障がい領域のシステム開発・販売「しょーあっぷ」 ■障がい福祉に特化した人材サービス「スターメッド」 ■サービス管理責任者の職能団体の運営 ■全国障害福祉事業者連盟の運営

譲渡内容

譲渡額
非公開
譲渡範囲
95%  ※継続して経営に関わるため

EXITERの経歴

氏名
藤田英明
経歴
1998年~2001年 埼玉県の社会福祉法人にて介護職 兼 生活相談員として就職。事務局長、施設長、理事を歴任
2002年     混合介護の夜間対応型高齢者デイサービスで起業。日本全国で950事業所展開(世界一の拠点数)
2016年~現在  株式会社アニスピホールディングス創業。福祉関連事業を複数展開

ブラジルで目の当たりにした貧困問題から社会福祉業界に関心を持つ

父親が銀行役員であり、比較的裕福な家庭で育ちました。父はバブル期の銀行員なので、資本主義の権化みたいな人です。(笑)
僕は幼少期からサッカーを始めて、10代はサッカーに全て捧げていました。小学校・中学校は全国大会に出場し、高校は強豪の鹿児島実業高校でサッカー漬けの日々を過ごします。その後プロサッカー選手を目指してブラジルに渡り、2部リーグでプレーをしました。

中学2年生の時に初めてサッカーでブラジルを訪れた際、ストリートチルドレンのような貧困問題を目の当たりにします。幼いながらに、何故貧困は生まれるのだろうかと考えるようになります。日本は決して貧しい国ではないですが、そんな日本でも生活保護を受ける人が存在します。

”貧富の差がなぜ生まれるのか”を調べてみたところ、貧しい家庭は孫世代まで貧困が継続する傾向がありました。僕はこの問題をより深く学ぼうと考え、大学では社会福祉学を専攻します。在学中は貧困に関わる生活保護制度等の講義を中心に受講していく中で、貧困と障害の関係を知ることになります。
精神障害・知的障害が原因で社会に適合できず生活基盤が築けない人は、貧困層の約6割を占めます。また、障害は遺伝性がある事がわかりました。

そこから精神障がい者が、病院を退院した後に社会復帰するプロセスに興味が湧きました。約20年前は、精神障がい者に対する国の制度が整備されていない状況でした。
大学の卒業論文では『精神障がい者の社会復帰の可能性』について書きましたが、僕の見解として当時の状況を踏まえて「精神障がい者は社会復帰できない」という結論に至りました。教授からは、その結論はどうなんだとツッコまれましたね。

大学卒業と同時に精神保健福祉士という国家資格を取得しましたが、資格を活かせるような就職先はありませんでした。
本当は精神障がい分野に就職したかったのですが、求人がなく資格を活かせそうな職場が介護施設しかなかったため、言い方は良くないですが致し方なく介護の道に進みました。就職した1998年の後に、''2000年 介護保険法‘’と''2013年 障害者総合支援法’’が施行されたので、新卒のタイミングは社会的にまだ福祉分野への注目が低い時期でした。

社会福祉法人での経験

僕は頭が良い人ほど、介護業界に就職した方が良いと考えています。
介護業界は優秀な人ほど昇進が早く、上を目指していける環境です。社会福祉法人に就職して、介護職 兼 生活相談員として勤務しておりました。その後、事務局長、施設長、理事を歴任する事となります。

勤務先の社会福祉法人は理事長と事務長が親戚で、大喧嘩をしたことによって事務長が辞任。
金髪ピアス姿で働いていた僕が23歳で事務長に就任して、全国の社会福祉法人で最年少事務長となります。25歳で事務長 兼 理事 兼 施設長であったため、給与はそれなりに貰っており仕事を辞める考えはありませんでした。

この頃、老人ホームに入りたくても入れない介護難民が全国に40万人いました。僕の法人でも待機している人が600名おり、最後の人が入居できるのは35年後でした。申し込みされている方の年齢が85歳前後なので、『120歳になったら入れます』といったこの状況を変えなければいけないと考えるようになります。預けたい家族の方は共働きが多く、日々の介護疲れで虐待をしたり、最悪なケースだと殺害事件に発展した居た堪れないニュースを耳にする事が増えていました。法人内の入居待ちのご家庭でも問題が発生したため、これは国の制度だけでは介護を必要とする家庭を支える事はできないと考えた僕は、26歳で混合介護の夜間対応型高齢者デイサービスで起業します。

起業→福祉施設として世界一の拠点数へ拡大

全国初の混合介護サービスを作ったのが僕です。
当時介護サービスとして認められていたのは、老人ホームと日中デイサービスのみです。その中に一時利用できる夜間介護サービスは含まれていませんでした。僕は家族の負担を軽減できるような、一時利用できる夜間介護サービスの必要性を感じていました。国としては自分たちの作ったガイドラインに抜け目はないと考えていたと思います。

当時の介護施設は新築で作るのが一般的でしたが、僕は空き家を活用して施設を作りました。国側は空き家を使うなんてとんでもないと考えていたでしょうね。僕としては、日本の既存リソースを活用して施設をつくる事で税金の削減にも繋がるため、国側としてのメリットが大きいと考えていました。また当事業をフランチャイズ(FC)展開していたため、介護でFCなどありえないと反感を買い、僕自身も確信犯的に厚生労働省に喧嘩を売っていました。
その喧嘩の結末として、夜間介護は保険対象外で変更はありませんでしたが、介護サービスとして認められました。厚生労働省がガイドラインを作って、その内容に則っていれば混合介護サービスを展開して良いという結論に至ります。

当事業は全国に拡大を続けて、国内950拠点・利用者3万5000人の巨大事業となりました。同時に当サービスの類似事業所が全国に拡大して、全国に1万事業所まで増加します。なんと僕が作った当業態で、国家予算の1兆2,000億円を投じるまでになりました。

会社は順調に成長して、ご縁があり株式譲渡をする事になります。

株式会社アニスピホールディングス創業

日本の年間40兆円の医療費を改善する動きとして、2005年に医療の構造改革が行われて精神医療の変革期が訪れます。
精神医療は1969年に起きたライシャワー事件がキッカケで、長年に渡り精神障がい者は精神病院に隔離する方針でした。しかし、この度の改革によって、入院治療中心から地域生活中心へと方針転換が起きます。

そこで僕は学生時代から関心を寄せていた精神障がい分野で起業を決めて、グループホームを立ち上げます。
全国に精神病院が30万施設ありますが、早期退院させる方針になった事で退院後の生活基盤を支える受け皿が必要でした。また、僕は動物が好きで動物愛護センターで保護されていた犬8匹、猫4匹、ペレット1匹、鳥80羽を自宅に迎え入れています。日本は年間2万5千頭の動物を殺処分しており、人間に置き換えると大量虐殺です。そこで動物を福祉施設で保護していくような、ムーブメントを作ることは出来ないかと考えて、ペット共生型障がい者グループホーム「わおん/にゃおん」が生まれます。

『動物×精神障害』は、動物の癒し効果によって精神障がい者の症状が改善した事例が欧州中心に複数実証されていました。動物介在療法・アニマルセラピーの要素として保護動物を施設で受け入れ、更に増え続けている空き家を活用して精神障がい者の住まいを提供しています。

事業拡大の方法として、レベニューシェアを取り入れました。FCの場合は契約内容が詳細まで決められており、加盟店側がフレキシブルに入居者のニーズに対応できないという課題があります。その他にFCでよくあるのが、契約解除をしたら事業所を閉じなければならないという内容です。しかし僕たちの事業は社会インフラであり、契約終了後に施設が閉鎖してしまうと入居者の生活基盤を脅かしかねません。

それを改善するための策が、レベニューシェアです。当社がノウハウを提供して、その知見を活用して得た利益をシェアしてもらう仕組みです。当初は周囲から、「レベニューシェアとは何なんだ?」といった反応がありましたが、徐々に浸透してきて全国979拠点まで拡大しています。

M&Aプロセス

今回はM&Aの新しい形にチャレンジできそうだと感じたため、M&Aに動きました。
経営者として上場企業の経営に携わりたい気持ちがありました。IPOを目指す企業は多いですが、実際にIPOできるのは一握りです。IPOが難しい状況になったからといって、ただM&Aを選択するのも面白味がないと感じます。そこで自社の株式を売却しつつ、最終的には売却先企業の大株主になり上場企業の経営に参画したいと考えました。

譲渡先に決めた理由

オーナー同士の関係性が良い点が、最大の決め手です。
M&Aの打診を頂いた会社は複数ございますが、基本全スルーしていました。

檜垣氏(株式会社JFLAホールディングス代表取締役 兼 株式会社小僧寿し取締役)と話していく中で、小僧寿しのビジネスモデルと当社のノウハウを掛け合わせていくことによって、更なる成長曲線を描くことが出来ました。売り手側・買い手側の双方で今後のビジョンを一緒に描ける事は、とても重要です。それが出来るパートナーを今回見つけることが出来ました。

譲渡後の生活

僕は常に事業を作り続けなければ死んでしまう「マグロみたいな人間」です。

譲渡後は、より忙しい日々を過ごしています。アニスピホールディングスの代表取締役を継続しており、小僧寿しの取締役も務めています。
小僧寿しでは、既存店舗を就労支援事業所へ転換していこうと考えています。2022年6月に小僧寿し市川店が、『就労支援事業所 小僧寿し市川店』に名称変更しました。徐々にM&Aのシナジー効果が生まれてきています。

今後の挑戦は、小僧寿しの店舗を就労支援事業所に変えていくこと。障害福祉の分野でグローバル展開を考えています。
また、これは絶対やりたいと考えている事があります。それは施設入居者の動画データをAI解析することによって、その人がどのような状態であるかをスタッフにフィードバックできるような仕組みをづくりです。俗人的にならない仕組みを作ることができれば、サービス全体の質向上に直結します。福祉業界のDX化に貢献していきたいです。

経営者・事業家としての強み

福祉領域で新しいビジネスモデルをつくる事です。今後も多くの事業に携わっていきたいと考えています。
また複数企業で社外取締役を務めており、他人とは異なる発想で経営に携わる事が出来ています。社外取締役の役割として、社長が中々言えないようなことを指摘するなど自身の立場を踏まえて経営に携わっています。

M&Aを考えている人へのアドバイス

1番重要なのは、買い手側の社長と仲良くなることです。
バイアウトを検討している人は、この人と一緒に仕事をしたいと思えるような人に出会えたなら、長期的に関係性を築かれた方が良いと思います。
会社を売りたいなと思ったときに売却すると、買い叩かれるのでその点は注意が必要です。

当然の事ではありますが、契約内容は重要です。全部表明保障になるので、保証できない項目は保証しないようにされた方が良いと思います。

藤田氏の活動

■株式会社小僧寿し
https://kozosushi.co.jp/

■株式会社アニスピホールディングス
https://anispi.co.jp/

■ペット共生型障がい者グループホーム「わおん/にゃおん」
https://anispi.co.jp/waon/

■生活介護障がい者デイサービス「ワーカウト」
https://anispi.co.jp/workout/

■動物看護師によるペットシッター&看護サービス「ケアペッツ」
https://care-pets.jp/

■精神特化訪問看護ステーション「わおん 訪問介護ステーションおえど」
https://anispi.co.jp/waon/vc-station/

■空き家の開発・再利用提案「空き家活用研究所」
https://akiya-labo.co.jp/

■障がい領域のシステム開発・販売「しょーあっぷ」
http://curewansystem.com/

■障がい福祉に特化した人材サービス「スターメッド」
https://starmedgroup.co.jp/

■サービス管理責任者の職能団体の運営
https://sabikan.or.jp/

■全国障害福祉事業者連盟の運営
https://zensyoren.or.jp/

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