都 鍾洵氏

譲渡企業:派遣会社
  譲受企業:個人

俳優から配送ドライバー、そして税理士資格を取得してマイクロM&Aの専門家に

大学中退後に俳優として活動。その後、起業や転職などを経て、現在は明和マネジメント税理士法人の代表税理士。全国マイクロM&A税理士協会 代表。ジャストM&A株式会社 代表取締役を務める。

譲渡企業

会社名
派遣会社
事業内容
■人材派遣事業

譲渡内容

譲渡額
非公開
譲渡範囲
100%

EXITERの経歴

氏名
都 鍾洵
経歴
大学中退後に俳優として活動。その後、起業や転職などを経て、現在は明和マネジメント税理士法人の代表税理士。全国マイクロM&A税理士協会 代表。ジャストM&A株式会社 代表取締役を務める。

夢を追いかけて借金200万円。夢をあきらめ社会人へ

私は4人兄弟の長男であり、昔からリーダーシップを取ったり目立つことが好きでした。小学生時代は学級委員長に立候補したり、スポーツはサッカーと野球をするなど人より目立つことを常に意識していました。そのような性格である一方で臆病なところもありまして、人にどう見られているかを気にしているような子供でしたね。

大学時代は学校がとにかく退屈な場所だと感じていました。そこで昔から注目を集める事が好きだったこともあり、俳優になろうと劇団の門戸を叩きます。実際劇団に入ってみると、大学生活では感じられなかった充実感がありました。この道で食っていけるようになりたい。「BIGになってやる」という強い気持ちを持って、大学を退学し演劇に専念しました。

ただ、皆さんもご存じの通り俳優業で生活できる人はほんの一握りです。
劇団員は本当にお金がなくて、俳優業と言っても仕事とは言えない状態なんですよね。舞台を行うためには会場を押えて人を呼ばなければいけないので、各劇団員にチケット販売のノルマがありました。正直100人呼び込めたとしても赤字なのでビジネスとしては成立していませんでした。
また、公演の時期が近づくと舞台練習に多くの時間が取られアルバイトをする時間が無くなってしまうので、生活費を補填するために借金をしてやっと生活が出来ていました。皆さんがイメージする若手お笑い芸人さんのような生活ですね。
劇団員の人がほとんど借金をしていたので、借金をする事に抵抗がなくなっていました。その後も借金をしながらの生活が当たり前で、気がつけば借金は200万円程になっていました。ある日、またいつものようにお金を借りようとしたら、借入が限度額までいっていて借りられなくなっていました。

この出来事が、自分自身を見つめ直す機会になりました。そこで就職をしようと決意します。

借金返済のために社会人生活を始める。簿記との出会いが人生の転換点となる

就職を決意した私は、朝早くから働ける仕事を探しました。
なぜ朝早い仕事を探していたかというと、劇団員時代から某大手チェーンの居酒屋でアルバイトをしており、アルバイトながら店長のようなポジションを担っていました。責任感があったこと、何より早く借金を返済したいと考えていたので、日中会社員として働きながら夜は居酒屋というWワークを考えていました。結果として、配送ドライバーの準社員の求人を見つけて、そこで働くことになります。

借金は1年程で完済、その後は配送ドライバーの仕事に専念しました。勤務態度が認められて営業へ異動となり、正社員として雇用して頂ける事となります。嬉しかったのは束の間で、給与の低さに驚きました。営業は歩合の割合が大きく、下手すると準社員時代よりも給与が低いこともありました。
この仕事を続ける事に危機感を感じた私は、兎に角資格を取ろうと考えました。色々な資格の本を見た中で簿記が自身に合いそうだと感じ、実際に勉強を始めて2週間で簿記3級に合格。その後、簿記2級も合格しました。

次のステップとして税理士を目指そうと志し、税理士法人へ転職しました。
様々な事業を行っている税理士事務所で、営業経験がある事から不動産営業の部署へ配属となりました。これは想定外で、一般的な不動産の営業と変わらない業務をしていたので退勤時間も遅く、税理士資格の勉強時間の確保もままならない状況でした。このままでは資格取得は難しいと感じて、現在の明和マネジメント税理士法人(旧:大川会計事務所)へ転職しました。

明和マネジメント税理士法人には、決算書もよくわからないような状態で入社させて頂きました。入社後は仕分けの切り方から決算書作成、税務調査対応などあらゆる事を学び、無事に税理士資格を取得する事が出来ました。

その後、先代の大川から税理士法人を引き継いで、現在は私が代表を務めています。
当法人では、M&Aにチカラを入れております。例えば100万円の居酒屋など、小規模なM&A案件も扱っています。通常仲介会社がやりたがらないような案件であっても、当法人では大歓迎です。概ね3,000万円未満の案件の仲介をさせて頂いております。

副業として、自身の会社を2度M&A

配送ドライバーを行っていた時に、自身で居酒屋を始めました。
元々勤めていた某大手チェーンの居酒屋は、主要駅にある席数200程のお店でした。とても繁盛していて忘年会シーズンになると、常に満席状態でした。そこで勘違いした私は「居酒屋の経営なんて楽勝」と思い、軽い気持ちで居酒屋を始めました。
実際に0から居酒屋を立ち上げるのは凄く大変で、メニュー開発から仕入れ先の開拓、細かいところだと電話の開通など、決して片手間で行えるようなものではありませんでした。日中の配達仕事が終わったら、そこから居酒屋の開店準備をするといった状況であったため、オペレーションを整える事が中々出来ず、お客様からクレームも頂きました。居酒屋開業から5ヶ月で、店を閉じました。
店は閉店したものの開業時に物件を購入して店舗としての設備は整っていた為、店子を探して賃貸業を行いました。最終的にそちらの会社を売却したのが、初めてのM&Aです。

飲食店のM&Aを経験した後に、副業で派遣会社を立ち上げました。
私の知人が大手企業のコールセンターでセンター長をしており、コールセンターの人員のほとんどが派遣社員である事を知ります。友人から、「派遣会社は儲かるからやってみないか」と話をもらったことがきっかけで起業しました。
ピーク時には13名が稼働しており、私個人の会社であったため収益も充分でした。取引先企業は1社でマネジメント工数がかからなかったのと、私の業務は請求書発行と給与計算程度であったため、居酒屋ほど工数がかからず経営は安定していました。5年程経営を行った後に、個人の方へ株式譲渡しました。

安定していた派遣会社をなぜM&Aに踏み切ったのか

派遣会社で働かれている方なら共感いただけるかもしれませんが、応募があっても面接に来ない事や勤務が決定しても出勤日に来ないといった方が約半数でした。
実際に派遣社員が勤務するまでの苦労や本業の税理士業務が忙しくなってきた事。1番最初に派遣会社に入ってきてくれた派遣さんの退職がきっかけとなり、私自身も本業に専念しようとM&Aを考えました。

M&Aに動き出してからは掲載型M&A仲介会社に相談して、5社程とお話をさせて頂きました。

売却にあたって重視していたポイントは、スピード感です。
自身が希望していた売却までのスケジュール感に合わせてくれる会社を探しました。
また、会社を大切にしてくれて事業を伸ばしていこうと意欲的な方へのバトンタッチがベストだとも考えていました。

最終的に個人の方に売却する事になりましたので、スキームとして株式譲渡を選択しました。資産要件を満たしていたので株式譲渡はスムーズに行うことが出来ましたが、想定外だったのが銀行が連帯保証人を外してくれなかったことです。
結果として、連帯保証が残ったまま株式譲渡をする事になりました。

売り手としてM&Aを経験して感じた事

M&Aを仲介する立場・売却する立場では、大きな違いがありました。
仲介に入っている場合は、客観的な視点から売り手と買い手の状況が手に取るようにわかります。一転して、自身の会社を売却する際は、私情が入るため冷静ではいられないこともありました。何社か引き合いがある中で、仲介として入る場合は滞りなくベストな形でクローズするように調整する事ができますが、売却側としての心理だと早く買って欲しい、いつまで返答にかかるのだろうと苛立ってしまったりと客観的にM&Aを行えていなかったと感じています。

今回の売却は仲介者を入れずに行いましたが、もし今後売却する機会があった場合は間違いなく仲介者を入れるでしょう。

今後の展望

私は税理士として、小規模のM&Aを積極的に支援していきたいと考えています。
M&A仲介会社ではフィーが合わないような小規模のM&A案件は、企業側と関係性が出来ており財務状況を把握している税理士が担っていくべきであると考えています。
2022年5月に全国マイクロM&A税理士協会を設立し、税理士の方々に対してM&A支援の方法や案件発掘まで、今までの十数件に上るM&Aの実績に基づいたノウハウをこのコミュニティ内で共有しています。
私個人だけでは全国の小規模事業者すべてのM&Aを支援する事は不可能なので、全国の税理士が小規模M&Aを積極的に取り組んでいけるようなナレッジを蓄積していき、後継者がおらず売上も大きくないため閉業という選択肢をとっていた経営者に対して事業承継という選択肢を提示していきたいです。

M&Aを考えている人へのアドバイス

仲介者または当事者としてM&Aを経験した立場として感じたのは、相手の事を考えてM&Aを進めるという事ですね。
M&Aの金額はあってないようなものであると感じています。正直売り逃げる事も出来てしまうかもしれません。ただ、M&A後に残る従業員や取引先の事も考慮した上で、売り手側企業はM&Aに踏み切って頂けると嬉しいです。

買い手側に関しても買い叩くような事ではなく、現在の事業とのシナジー効果や事業拡大に注力して頂けるといいですね。

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