短大卒業後に飲食店を経営。その後、まつげエクステ業界の成長性を感じ、2007年に「AOE株式会社」を設立。 AOEグループとして、まつげエクステサロン「EYELA」FC本部として40店舗以上の出店を行い、まつげエクステ商材卸会社「Pro Shop」などを展開する。 女性の活躍を推進し、女性の組織化を行ってきた。 2022年7⽉ BIQREA ホールディングス株式会社(ニューホライズン キャピタル)に株式譲渡。
学生生活も終盤に差し掛かる頃に、学校の就職相談室にある求人を見に行きましたが、どの会社にも興味を持つことができませんでした。
その足で本屋に向かい、飲食店開業・インターネットショップ・株に関する本を購入しました。当時の私はお金を稼ぐための手段を模索していたのだと思います。
就職ではなく起業を選択した私は、知り合い伝手で飲食店を開業できそうな物件があると聞き、アルバイト程度の飲食店経験のみでしたが、千葉市で洋風ダイニングを開業しました。
開業して2~3年は売上がとても少なく、自分で使えるお金は月10万円前後しかありませんでした。また、飲食事業に自分の時間を注ぎ込んでいたため、休日は殆どありませんでした。売上が上がらない要因として、ニーズがあっていない上に立地が良くないと考えて移転を検討しました。
日々物件を探していく中で、西船橋駅の駅前物件を見つけました。その物件は1階の角地であり、通行人の多い場所でした。西船橋駅は利用者数が多いにも関わらず、駅前のロータリーが小さく、大手飲食店が参入しづらい状況でした。「この立地であれば上手くいくかもしれない」と考え、移転を決意します。業態もニーズから考え、和風の居酒屋に変えました。
移転してみたところ、多くのお客様にお越し頂き、以前の店舗と比べて売上が2~3倍になりました。
私がマツエクサロンを開業したタイミングは、まだまつげエクステ(マツエク)自体が一般的ではなく、注目され始めている時期でした。私自身もテレビでマツエクの存在を知りまして、近所にできたマツエクサロンに行ってみたところ、満足度が高く且つ私でもできそうであると感じ、東京の池袋駅でマツエクサロンの開業を決めました。
ところが、無知な部分が多かったのと、飲食店の時に学んだ良い立地にこだわったがため、オープンさせるのに1,500万円かけてしまいました。今であれば1/3程度で出店できます。当時26歳の私は借入の返済におびえる毎日でした。
しかし開店したマツエクサロンが繁盛したため、数ヶ月後には2店舗目を出店します。
この成功を皮切りに、複数店舗の出店を行います。しかしながら、社内体制が整っていないにも関わらず店舗数を5店舗まで拡大したタイミングで、倒産の危機を迎えることになりました。キャッシュが毎月マイナスになり、不安な日々が続いたのです。
結果、そこから2年間かけて会社の立て直しに取り組み、仕組みづくりをおこなうことで会社を再建しました。
一番最初にやったことは「覚悟」を決めることでした。このままいって、これくらいの数字になったら会社を辞めようと決めました。その代わり、それまでは死に物狂いで立て直すんだという想いで経営改革をしました。
行ったのは不採算店であった3店舗を閉店させて、2店舗に縮小したことと、仕組み作りです。
仕組み作りは主に3つにわかれます
① マーケティングを取り入れた売れる仕組み作り
② 自走する組織を作るための人材育成
③ 経営のお金を見える化
最初はマーケティングの仕組化に着手しまして、広告集客のみに頼っていた体制の改善を試みました。また、直営ではなくFC展開で会社の規模拡大を推し進める。自社製品の認定講師制度をつくり、美容商材の販路拡大とブランディングに努めました。
また、会社の成長において重要なのが人(従業員)です。
マツエク市場は新興市場であり、経営者・技術者としても素人が多い業界でした。それ故に、社員教育に注力する企業も少ない状態でした。また、目元を扱うため正しい技術を身につけなければトラブルになりかねませんが、当時は技術習得のために1dayスクールに通ってすぐ現場に出るという会社が大半を占めていました。
当社は創業期からマツエクサロンの技術向上を目指す団体に所属しており、お客様に対して満足頂けるサービスの向上に努めていました。今では1~1ヶ月半の研修期間を終えてから、スタッフを各店舗に配属する仕組みにしています。
その他に社員教育において、数字に対する意識の変革も重要でした。
マツエクサロンのスタッフは20~30歳の女性従業員が多く、技術者ということもあり数字に対する苦手意識がある方が多かったですが、数字を見える化し、数字でコミュニケーションを取る文化を根付かせました。数字に対する意識が身についたことで、店長会議の場で当たり前のように数字でアウトプットをしている姿を見て、フランチャイズの店長にとっても良い刺激になっていると感じました。各店舗、部門がそれぞれ経営体のような組織になりました。
スピーディーな判断ができるように、経営者として見るべき数字と組織を自走させるために社員に見せる数字の見える化をしました。売上・利益だけでなくキャッシュを把握し潰れない会社作りをしました。
復活を遂げた当社は、店舗数は直営・FC含めて41店舗まで拡大することができました。
女性経営者には、男性経営者と異なる苦悩があります。
女性は妊娠をすると体調に大きな変化があります。また、お腹が大きくなると身動きも取りづらいです。
出産後は仕事ができる時間はほとんどありませんし、妊娠前のように100%仕事に打ち込むことも難しくなります。身体や生活の変化もあるため、会社の状況を見て妊娠・出産のタイミングを考えていました。
子育てをしていく中で、子どもが体調を崩した時であっても会社で緊急案件が発生した場合は、目の前に苦しむ我が子よりも仕事を優先してしまうことにジレンマを感じていました。
また、当社を信頼してFC加盟をして頂いているオーナーの中には、借入をしてC加盟をして頂ける方が多くいます。人生を懸けて挑戦して下さっている方がいる中で、子育てで仕事に100%コミットできていないことに何とも言えない気持ちになりました。
3人目の子どもを妊娠した際に、これからは子どもとの時間を気兼ねなく取りたい。また、スタッフやオーナーのことを考えた時に会社は成長させたい、と思い、両方を叶えるためにM&Aという選択を考えました。
売却先は自分で探すのと並行してM&A仲介会社に依頼して、M&Aへ動き出しました。
M&A先とシナジーが生まれることが望ましいと考えていたので、美容室を運営している会社と相性が良いと考えていました。マツエクサロンのスタッフは美容師資格が必要なため、美容室とマツエクサロンは人材の流動性を図ることができます。美容師が新たなキャリアとしてアイリストを目指した際に、当社で働くことができたらベストだと考えます。
当社がノンネームシートを出した場合、会社概要が分かりやすいため、業界を知っているような方だと当社だと気づかれてしまいます。業界内に噂がたって、私の目的とは異なる形で社員やFCオーナーの耳に入ることだけは避けたかったので慎重に動きました。
M&Aを進めていき、最終的に3社まで絞りました。その中で、BIQREA ホールディングス株式会社(ニューホライズン キャピタル)に株式売却を決めました。
BIQREA ホールディングス株式会社に株式売却をおこなった理由は、ファンドやBIQREA ホールディングスの社長を筆頭に、お会いした方々の印象がとても良かったからです。また、今後のビジョンに関してご説明頂きまして、この会社となら上手くやっていけると確信が持てました。むしろ、そのビジョンにワクワクしたほどです。
M&A後は、今までの出店ペースを上回るスピードで店舗数が拡大しています。
また、社員の士気も上がっていると感じており、モチベーション高く仕事に取り組む姿を見ることができて大変嬉しいです。
私が社長だった時にはしないような経営判断や声がけによって、組織が更に良くなっている姿を目の前で感じ取ることができており、経営者としても大きな学びになっています。
今まで培ってきたベースに+αしたことで、より強固な組織を作ることができたと感じています。
AOE株式会社の役員を務める傍ら以前から行っていた不動産投資を続けております。更に、Instagramを中心にSNSにチカラを入れております。
昨今、起業・副業を考える人が多く存在する中で、「自分らしく生きたい」「自分のチカラで会社経営をしたい」と考えている人たちに向けて、私の経営者としての経験をアウトプットしています。起業をしたいと考えている人が一歩踏み出すきっかけになれば嬉しいですね。
『私らしく、もっと自由に』が、私の人生のテーマです。
20年経営者をしていると大変なことも多くありましたし、仕事ばかりしてきた中で、M&Aを通して大きな区切りをつけることができました。
自分らしくいるために、ビジネスはとても大切な存在だと感じています。今後のビジネスとの向き合い方として、組織拡大を目指すよりも家族との軸をベースに仕事を行おうと考えています。
M&Aに動いていた時は、通常の会社経営と妊娠中での体調の変化、M&Aを進めることでキャパシティが限界だったために売却後のことは全く考えていませんでした。とにかく、良い形で無事に会社を引き継ぐことだけに集中しました。出産後には子育てをしながらでもSNSならできると思い発信することにしました。
今後は私の経験やビジネスに関する情報を求めている方に向けて発信を続けていければと考えています。
焦って相性が合わないような会社への売却だけはしないように注意しました。
私の場合は、出産までにM&Aを完了させようと決めていましたが、納得いかなければM&Aは取りやめようとも決めていました。
「売らなきゃいけない」と焦った状態ではディールも上手くいきませんよね。
それなのでモチベーションのコントロールは重要で、M&Aに動いてはいましたが、ずっと会社経営を続ける気持ちで仕事に向き合っていました。
焦りを生まないための、工夫をされることが大切ですね。
■Instagram
https://www.instagram.com/isobemaki_/